エンジンオイルについて <品質と粘度>

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エンジンオイルについて <品質と粘度>

2017年03月31日

前回お話した「エンジンオイルの種類と規格」に続いて、今回は「エンジンオイルの品質と粘度」についてお話します。

○エンジンオイルの品質
エンジンオイルはオイルの製法の違いによって、「化学合成油」、「部分合成油」、「鉱物油」の3種類に分類されています。これらのことを「ベースオイル」といい、通常この「ベースオイル」に「添加剤」をプラスしたものがエンジンオイルとなります。
エンジンオイル=「ベースオイル」+「添加剤」みたいな感じですね。

【化学合成油】
最高品質とされるもので、鉱物油を化学分解したものにエンジン洗浄と環境を考えた添加剤を化学合成した良質なオイルです。成分や分子量を一定にしているため、どうしてもコストは高くなりますが、幅広い使用状況下において安定した高性能を発揮します。

【部分合成油】
鉱物油に化学合成油あるいは水素化精製油を2~3割ほど混合したベースオイルで、コストと性能の両面を併せ持っていますが、過酷な使用で求められる耐熱性能等の性能面では化学合成油に劣ります。

【鉱物油】
原油から精製されたもので、現在一般的に最も普及しているベースオイルですが、分子量等が揃っていないため、組成が破壊されやすく性能面ではどうしても一番劣ります。
しかし低コストで生産可能なため、それが価格にも反映し、安価で最もポピュラーなエンジンオイルとして幅広く流通しています。

順番をつけると【化学合成油】>【部分合成油】>【鉱物油】となるわけです。
もちろん高性能・高耐久が求められるレース等のモータースポーツでは化学合成油を使用するのは当たり前ですが、その反面で「鉱物油ってどうなの?」という素朴な疑問を持つ方も多いと思います。
侮ることなかれ…年式・構造がやたら古いエンジンや、かなり大雑把な精度で設計されたエンジンには鉱物油が一番最適です。
なぜかというと、古いがゆえに材質や加工精度も当時の技術でそれなりにしか作れないからです。当初から鉱物油の使用を前提で、「小さな事は気にしない」の大陸的な精神で設計しているエンジンは、各部のクリアランス(隙間)や使用しているパッキンもそれなりということがキーポイントになります。このようなエンジンには分子構造の荒い鉱物油が最適で、その代表的な最大のメリットは「オイルが漏れにくい」の一言につきます。
もし、このようなエンジンに、良かれと思って性能の良い化学合成油を使用した場合、それらが持つ粒子の細かさと、エンジンその物のクリアランスが災いとなり、オイル漏れを引き起こしちゃう可能性があります。しかも、それなりの作りになっていますから、エンジンを超高回転でガンガン回して走ったり、ぶっ続けで超高速走行をするような乗り方とは縁がありませんよね。わざわざ高額の化学合成油を使用しなくても、鉱物油で充分問題ないということです。

どうですか?エンジンオイルの品質にはそれを定める規格だけではなく、性能と特性が関係する3つの種類があることをお分かりいただけましたか?
続いては最もポピュラーな部分、粘度についてご説明します。

○エンジンオイルの粘度
エンジンオイルは「低温時では硬く、高温時では柔らかい」という性質を持っていますので、エンジンの種類・走行条件・運転状況・住んでいる場所の環境に適したエンジンオイルを使用することが求められます。つまりエンジンオイルそのものの粘度が密接に関係してくるわけです。

一般的に「5W-30」等の表記をよく見たり聞いたりする事があるかと思います。これはオイルの低温時と高温時それぞれの粘度を表したものです。
前側に記載されている「5W」が低温時の粘度で、「5W」の「W」とは「Winter(冬=冷間時)」を表し、寒い冬やエンジンが冷えている時の粘度の度合いを表しています。この数値が小さければ小さいほど低温時でもサラサラで柔らかいオイルであることを意味しています。低粘度のため、朝一やエンジンが冷えている時にもエンジンの始動性が良い、エンジン内部の抵抗が減少し燃費が良いなどの効果が期待できます。
後ろ側の数値「30」が高温時の粘度で、数値が大きければ大きいほど、エンジンを高回転で回してエンジンオイルが高温になってもシャバシャバになりにくく、その硬さを保ちやすいオイルであるということを意味します(料理で油を使う時をイメージして下さい)。つまりこの数値が大きいほど高温時でも粘度が柔らかくなりすぎず、強固な油膜(オイルの保護膜)を形成し続けるため、性能も低下しにくく、高速走行やスポーツ走行等をする場合に向いているということになります。

ちなみに…「5W-30」という粘度指数のエンジンオイルをよく目にしますが、中にはもう少し硬めの「10W-40」というものや、ターボを搭載した高出力エンジン向けの「10W-50」というものも存在し、それ以上の指数の硬さのエンジンオイルも多数存在します。
それと相反して近年では、エコカーの増加に伴い「0W-20」といった非常に低粘度なオイルもありますが、これらは低燃費に主眼を置いて作られたオイルで、その名の通りズバリ低燃費車、つまりエコカー専用のエンジンオイルです。燃費が良くなると思いこみ、これをエコカーじゃない従来の普通のエンジンへ使用するのは、オイルの粘度が全体的に柔らかすぎるためあまりオススメできません。
燃費にこだわりたいという方には、「0W-40」というワイドレンジなエンジンオイルも存在しますので、こちらをオススメします。
エンジンオイルの粘度は、アメリカの非営利団体である、自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)という機械関連の専門家を会員とする、自動車・トラック・船舶・航空機などの自力動力で動く機械全てのものに関する標準化機構がオイルの粘度を定めた「SAE規格」というもので表されており、世界で広く普及しています。

今回の解説で、何となくエンジンオイルの品質全般に関してご理解していただけましたか?
今回触れた内容は、二輪や四輪の整備関連のお仕事されている方にとっては当たり前で常識的な内容かとは思います。
しかし過去に自動車の整備工場を訪れた際に、実際そこで責任者を務めている整備士のおじさんが、「SJ」と表示されているエンジンオイルのボトルを見た時に、「これは一番いいオイルだ」「すごく高額だ」「とても高性能だから、どんな車にも使える」と大興奮&大絶叫していたのを目の当たりにしてドン引きした経験があります。
たしかに当時の規格は「SJ」が最新でしたが、「10W-30」という普通の粘度で、成分は「鉱物油」と思いっきり記載されていたわけですよ…
ちなみにメーカーは見たことも聞いたこともないメーカーのエンジンオイルでした…
それを遠回しに突っ込んでも「SJ」だから一番いいオイルの一点張りで、それ以上は何も言う気すら起こらなかった記憶があります。
つまり整備業界の人ですら分かっているようで分かっていない人も存在するほど、今回解説した内容は一般の方々にとっては馴染みがないため、初めて知ったという方も中にはいらっしゃるかもしれませんね。

これからエンジンオイルを交換する際は、
①そのエンジンオイルはガソリン用?ディーゼル用?兼用?
②規格はどれか?いつの時代の規格か?最新の規格なのか?
③性能はどれを選ぶか?(性能重視/コスト重視)
④粘度はどれを選ぶか?(硬め/省燃費タイプ)
こんな感じで今まで気にしなかった点にも目を向けてみるといいかもしれませんね。

エンジンオイルの性質や品質に関するお話はここまで!
次のお話ではエンジンオイルの交換について少し深い所まで解説したいと思います。ではでは。

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